Time is money

日常のこと、web関連、映画の感想について書いていきます

サービスを創る時に大切にしていること

こんにちは!

最近、かなり冷え込んでお布団が恋しいですね。

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先日、レバテックさんが運営するヒカラボというイベントで、僕の所属するdely, Inc.のエンジニア/デザイナーのみが登壇する会を催させていただきました。最終的には100名強の方におこしいただき、大盛況で終えることができました。僕としてもそんなに大勢の前に出てお話させていただく機会は初めてで、とてもいい経験をさせていただきました。

atnd.org

そのイベントの懇親会で様々な方と話す中で熱く感じたことがあったので、モチベーションがあり忘れないうちに文字に起こしておきたいと思いました。

最近、「奥原さんが書く記事はいつも同じような内容ですね」と言われて、確かにそうだなと思ったのですが、そこまで経験が深いわけでもなく、ほとんどが自分の頭の中を文字にしているだけです。そのため、ほとんどが自分という枠組みの中ででしか書けないので、ご容赦ください。最低限、内容が被らないようにしたいです。

これは僕個人の考えなので、所属する組織には全く関係がありません。また、ここで使われる「サービス」は主にインターネットを介したサービスであり、主にCtoCやBtoCのようなサービスを指します。「エンジニア」はそのサービスのエンジニアのことを意味します。

1. 契機

この記事を書こうと思い立った切っ掛けは、上記イベントでお会いした一人の学生と話をしていた時でした。その方は大学一年生で自分の大学の学園祭で使う各企画の投票を行うサービスを作ったと得意気に教えてくれました。Ruby on Railsという主にwebアプリを構築する時に用いられるフレームワークを初めて触って作ったというそのサイトを実際に拝見して、かなり作り込まれているという印象を受けました。残念ながら、そのサイトは現在メンテナンス中のようで、リンクは控えておきます。

よくある投票サイトでは、ちょっと頑張れば機械的に投票できてしまう作りになっていて、エンジニアとしてはその投票数を信用していいのかと疑問に思ってしまうのですが、その学生が作ったサイトは最近よく用いられる「reCAPTCHA」という下記のようなシステムが導入されていました。

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また、cookieを使って同じブラウザでは複数回投票できないなど、最低限の設計はできていました。さらに、デザインはBootstrapを使っていて、ちゃんとスマホ対応もしてありました。

初めて作ったサイトとしてはかなりのできだと思いました。その学生の話を聞いていて、中に秘めた熱い何かを感じ、すごく嬉しいというか自分と同じような境遇だなと思い、親近感が芽生えました。では、自分はどうだったかを思い出した時の考えを文字に起こしておきたいと思い、これを書いています。

 

2.  プログラミングを始めた理由

様々なところでこのことについて書いているので、もう知っている方もいると思いますが、改めて書きたいと思います。プログラミングを始めた理由の一番は、大学一年生の終わりに何か新しいことを始めたいと思ったからです。

僕が通っていた早稲田大学には早稲田大学マイルストーン編集会というサークルが発行している「Milestone Express」があり、それにはサークル情報やゼミ情報、講義情報など学生生活に欠かせない情報が集約されています。大学初学年では欠かせない雑誌で、僕も三年生くらいまでは毎年買って、講義選びの要素にしていました。

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この雑誌は現在ではAmazonで買うことができるようですが、僕が在学していた時は、近くの書店で売っていて、その価格は確か500円だった気がします。ワンコインなので、そんなに痛手ではなかったのですが、総合雑誌であるが故に重いし嵩張るという難点があり、ここだけの話ですが講義情報もその数故に一つの講義に対して一つのレビューが限界でした。また、去年以前のデータにアクセスすることが難しいという点もありました。

そこで僕はこの大学生のための情報をオンライン化して、誰でもどこでもアクセスできるようにすれば、皆が幸せになるのではないかと考えました。そんな妄想を描きつつ、高校の授業で少しやったことがある、プログラミングを独学で勉強することにしました。今では当たり前だと思うことが、当時の僕にはわけがわからなすぎて、サイト作成は難航を極めました。その中で制作期間数ヶ月でやっとできたサイトがこちらです。

course-view.herokuapp.com

久しぶりにみたコードは目も当てれないほどで、なんでこんなことを書いているのか笑えてくる部分もありました。デザインもちょっと目も当てられないですが、初めてcssを触ったので、ご容赦ください。適当なメールアドレスで登録できるので、ちょっと触ってみてもらえると嬉しいです。なぜ、サイトに「早稲田」とつけたかというと、この時ちょうどFacebookの創業物語である、ソーシャル・ネットワークという映画が公開されており、Facebookはハーバード限定のコミュニティとして始まり、そのブランドもあり他の大学でも使われるようになったからです。マイルストーンというエコシステムがある早稲田から盛り上がっていけば全国の大学やその他の教育機関でも使ってくれるだろうと驕った発想をしていました。

また、このサービスに込めた想いはもっとあり、このサービスが頭角を表せば大学組織そのものも破壊できるだろうと考えていました。それはなぜかというと、正直専門的な講義以外の大学の講義になんの価値も感じていませんでした。誤解を招くと申し訳ないので、講義の大半は専門的知識を養うことができる意義のあるものばかりでした。僕がなぜそうに思うようになったかというと、人間は誰しも楽をしたい生き物だからだなと思うからです。ほとんどの学生は楽に単位が取れればいいと考えており、それに最適化されるように講義も最後のアンケートを適当に書けば最高の評価が得られるものが溢れていて、そういう講義の方が人気がありました。早稲田らしいといえば早稲田らしいのですが、難しい問題を何度も何度も解いてやっと得たAという評価と講義中は寝て過ごし、最後のテストで適当に書けばもらえるA+がどうしても前者以上の価値があるように思えなかったからです。僕が真面目すぎるのがいけないかと思うのですが、それは仕組みの問題だと思っていて、講義に対する評価が期末に行われる形骸化されたアンケートしかないという現実が問題だと考えるようになりました。この考えと僕が作ったサービスがどうに結びつくのかというと、講義あるいは教授を評価する仕組みを丸ごと入れ替えられる仕組みを作ったからです。サービスが盛り上がり、早稲田生の誰もが使う規模に成長し、他の大学でもシェアを拡大されれば、大学側も僕のサービスを無視し続けることはできないだろうと踏んでいました。その中でサービス内で講義を評価する仕組みを設けて、講義や教授に対する口コミを投稿できるようにしておけば、本当に価値のある講義のみが生き残り、その他の楽に単位を稼げるような講義たちは自然淘汰されるだろうと、過激な妄想を展開していました。

結果はどうだったかというと、火を見るよりも明らかで、このサービスは流行りませんでした。その原因は多すぎて列挙に暇がないほどですが、デザインがダサいことや機能不足ということを除けば、エコシステムの構築に失敗したからだと思います。いけてないサービスでも、自分にとってかなり有益な情報が得られるならば多少は使ってもらえるだろうと思うので、優良なコンテンツを集めることができなかったのが原因だと思いました。本家「Milestone Express」は、僕が在学時にはサークル情報を掲載する代わりに講義やゼミ情報を提供するという仕組みになっていました。サークル愛が強い早稲田こその仕組みで、ほとんどの学生は自分の興味があるサークルを一覧でみるために使っているほどなので、そこに掲載されることはサークル存続の生命線でもあると思います。その強固なコンテンツ収集のエコシステムが構築することがサービス運用の肝だったと思います。僕もそうすればよかったのかも知れませんが、少数でそこまで作り上げるのは労力的にも厳しかったです。ほとんどの大学にあると思いますが、シラバスという講義情報を集約したシステムがあり、その管理をしている大学側の講義情報の提供を依頼するメールも送ったことがありますが、結果は惨敗に終わりました。

このサービスを通して学んだことは、サービスを作っている時は少数のメンバーで大きな目標や野望を共有して、ワクワクして、絶対に成功すると思っているけれども、実際に運用を始めると、困難の連続で、成功することは難しいということでした。この講義情報のサービスは大きいところではリクルートが運営する「すごい時間割」や楽天が運営する「みんなのキャンパス」などがありますが、あまり成功している印象はありません。大学を革新するという大義名分とは裏腹に、ユーザー数は限られているし、マネタイズの面でも厳しいので、市場選択が間違っていたかもというのが現在考えていることです。

ただ、このサービスを通して、自分が作ったサイトが世界からアクセスできるようになったことはすごく感動したし、仲間と夜な夜な語りあったり、開発で徹夜したりした経験は、今の自分にしっかりと活きているなと思います。この経験があったからこそ、今でもエンジニアを続けているのだと思います。

 

 3. サービスを創る時に大切にしていること

学生時代に上記のサービスを含めた複数のサービスの立ち上げをエンジニアとして行い、ほぼ全てのサービスがクローズしました。現在でも運営されているのは、ユーザー数が「ソーサル」というフットサルのコミュニティだけです。たまにコミットすることもありますが、運営側ではありません。

sosal.me

そんな僕が言っても説得力がないと思いますが、サービスを創る時に大切だと思うことを三つ書きたいと思います。

  • 愛あるいは情熱を傾けることができるか
  • 自分がユーザーである、あるいはそれに近い立場にいるか
  • 運営あるいは開発を通して自分が成長、利益、達成を得ることができるか

これについて詳細に書きたいと思います。あくまでも個人の考えなので、所属する組織には関係がないことは、大事なので二度書きます。

この三つは独立しているわけではなく、複合的に絡み合っていると思います。

 

4. 愛あるいは情熱を傾けることができるか

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まず、サービス開発あるいは運営に必要なのはそのサービスへの燃えるほどの愛や情熱です。ここでいうサービスとは、上場企業が運営する大規模なサービスではなく、ベンチャーやスタートアップが運営する生まれて間もないサービスや、個人の趣味で運営するようなサービスです。個人で運営するWordPressを用いたECサイトも対象になります。

なぜ、感情が大事なのか。それはサービスにも波があるからです。注目されている個人や企業であれば、サービスを世に出せばそれなりに話題になり、メディアにも取り上げられたり、友人から賞賛のメッセージももらえることでしょう。初めはユーザー数もうなぎ上りに増えて行くかも知れません。しかし、きっとどこかで死の谷がくると思います。これは研究開発の時にも出てくる言葉ですが、革新的な技術が製品化して世にでるまでの過程で他にも「魔の川」や「ダーウィンの海」と呼ばれるものもあります。その死の谷を這い上がって、ダーウィンの海を乗り越えて行くまでには、自分あるいは組織の生み出すサービスが絶対に世の中を変えると信じ抜くことが大切だと思います。

変化が急速なインターネット上のサービスにおいて、インフラ整備などのタイミング的な部分もありますが、自分たちが想い描くビジョンが世の中に上手く迎合できないケースも少なくありません。身知らずの人の家に宿泊する「民泊」が一般的になり、テレビや法整備さえもされるようになったのはここ数年の出来事のように思いますが、Airbnbというサービスがローンチされたのは10年程度前の2008年のことです。創業時の話は本になるほど面白いですが、Airbnbはローンチからは鳴かず飛ばずだったそうです。Airbnbがこれほどまでにグローバルで使われるサービスになったもの、創業メンバー達のこのサービスが世の中を変えると熱い想いが多少なりともあったと思います。

サービス運営に限らず、自分が行なっていることが苦しい時こそ、自分の中にある「何故、それをやっているのか」という根底がしっかりしていることが大事になってくると思います。それが、自分たちが創り出すサービスは必ず世の中を変える力を持っていると信じる情熱だったり、愛なのではないと思います。

 

5. 自分がユーザーである、あるいはそれに近い立場にいるか

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次に大事だと思うことは、自分がユーザーであるサービスか、あるいはその近い立場にいるかということです。主観的には、自分の実体験に基づくのですが、先述したソーサルというサービスを続けられなくなった要因の一つがフットサルがそんなに好きではなかったという点にもあったからです。技術的や金銭的なインセンティブが乏しい時には、そのサービスを自ら楽しむことだったり、ユーザーと対話してそのサービスの価値を常に確かめることが大事だったりします。それがないとローンチまでは走れても、継続的なモチベーションを持つことが困難になると思います。

またAirbnbの話になってしまいますが、詳細は省きますがAirbnbが伸び悩んでいた時に、ポール・グレアムが創業者の一人のブライアンに「ユーザーのところに行け!」とアドバイスしたと言います。そうして、ユーザー数が多いニューヨークに行き、一軒一軒のユーザーを訪問し、どうのようにサービスを使っているのかなどをヒアリングし、サービスの改善に活きたという話があります。その話から考えたことは、どれだけサービスが大きくなったとしても、それは使ってくれる一人一人の積み重ねであるということです。

多くのサービスでユーザーファーストという言葉をよく聞きます。ユーザーファーストと一口にいっても様々な考え方があると思いますが、僕が思う最善策は自分がユーザーであること、あるいはユーザーに近い立場で納得しながら、改善施策を回せることだと思います。しかしながら気をつけないとならないことは、自分の主観で全てを決め手は思わぬ方向に行ってしまうのと、ユーザーの声を聞きすぎると、ノイジー・マイノリティに左右されてしまう可能性があるということです。話が逸れますが、ユーザーファーストを考える際にいい記事を紹介するので、時間がある時に是非読んでみてください。

www.wantedly.com

まとめると、自分がユーザーであるか、あるいはその近い立場にいれば、ユーザーの声を上手くサービスに反映させながら改善させることができ、数ある施策の中でも効果的なものの判断軸がずれることが少ないのかなと思います。

 

6. 運営あるいは開発を通して自分が成長、利益、達成を得ることができるか

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サービス運営あるいは開発で大事だと思うことの最後は、運営あるいは開発を通して自分が成長、利益、達成を得ることができるかという点です。さらに抽象的にすれば、自分にプラスになることは何かということです。それが給料という金銭的なものであることも多いでしょう。ベンチャーやスタートアップはどちらかと言えば、自分の成長であったり、世の中に対してインパクトを与えたという達成感かも知れません。これは人によって大きく異なる価値観であると思うのですが、僕としては、今自分が行なっていることで自分の長期的な成長につながり、僕の目的でもある多くの人を幸せにしたいということが断続的にでも満たされている状態が好ましいです。それで健全に生きていけるだけの給料がいただければ何も言うことがありません。

仕事をすればするほど、業績が伸び、自分の給料が上がっていった言われる、いわゆるバブルがとうの昔に終わり、デジタルネイティブと言われる生まれた時から高い水準のゲームやインターネットがある世代が今後台頭してくる世の中において、多くの時間を投資する仕事や趣味で持続的なモチベーションを持つことが難しくなってきていると思います。その中で、考えられるようになったのが、モチベーション3.0と言うダニエル・ピンク氏が提唱する考え方がしっくりきます。成果を出せば報酬が上がり、サボれば減給とあるようなアメとムチのモチベーションシステムから、「自分が本当は何がしたいのか」と言う内発的な動機付けによってモチベーションを持続的に持つことができると考え方です。

自分が行なっていることを通して、僕の例ではエンジニアとしての技術的な成長や、サービス運営のノウハウが蓄積されたり、世の中に対してインパクトを与えているポジティブなフィードバックがあることで、さらにモチベーションになるという正の循環を構築することができます。サービスは作って終わりではなく、そこからが大事になってくるので、何かしら自分にとってプラスなことが継続してないと、息が長いサービスを創っていくのは難しいと思います。

 

7. バグってる人生の方が面白い

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これはこのエントリの題とは全く関係がないので、飛ばして大丈夫です。最近考えていることについて書きます。大半は自分を正当化したいだけなのかも知れません。人の幸せや面白いと思っていることはそれぞれなので、あまり深く受け取らないでください。

「バグってる人生の方が面白い」この言葉は、wantedly, Inc.のCTO川崎さんのブログのタイトルだったのですが、現在は削除されているようです。最近、上場もあったり、色々あるんですね。以前、そのブログを読んだ時に、あえて誰もやったことがない道を選んだ方が、自分の市場価値をあげられるという内容が書いてあった気がするんですが、僕も王道のような人生路線から脱線してしまったので、かなり心強かったのを覚えています。

どこでもそうだと思いますが、社会に出たら大学の時の試験とは異なり、正解なんてありません。しかしながら、ある程度の企業に入ればメンターがつき、しっかり目標を立ててくれ、成長の手助けをしてくれるものと思います。的確な助言もしてくれるでしょう。その環境から比較すれば、ベンチャーやスタートアップは本当に何もありません。自分と同じスキルセットのメンターもいないこともあります。そして、誰もやったことがないことをするのがベンチャーやスタートアップの醍醐味でもあります。地盤も自分たちで創っていかなければなりません。さらに正解がわからない道のりが目の前に広がっています。もしかしたら、来年は自分が所属していた組織が消えているかも知れません。

しかしながら、誰もがそんなのありえないよと考える未来が本当に実現できたら最高に面白いです。今、FacebookAirbnbTwitterInstagramなど誰もが使っているサービスもそうやって生まれてきたんだと思うと、挑戦しないことの方が怖くて仕方ないです。

誰もが日本企業は倒産しないだろう、まさか自分が所属している会社が経営破綻することはないだろうと思っているかも知れません。しかしながら、それらが現実になっている現代において、十年先の未来を予想することは不可能です。それならば、どこでも生きていける力を身につけ、急激に変化する世の中にうまく溶け込むことの方がより良い生存戦略かも知れません。自分の人生の責任を負えるのはあくまで自分しかいないわけで、自分の選択を正解にできるのも自分しかいないです。

そうは思いつつもできることは日々、目の前のことを愚直にこなしていくしかなくて、泥臭く生きていこうと思います。